乳がん手術後のお悩みのひとつが、ブラジャーとパット選びです。
手術や治療方法が決まると、今度は
「手術の前には何を準備したらいいの?」
「治療方法で、身体にはどんな変化があるの?」
「いつから普通のブラジャーにすればよいの?」
「パットはどう選べばいいの?」
と、どんどん不安や悩みが出てくると思います。
ここでは、そんなあなたの不安や悩みを少しでも解消できるよう、主に術後の下着選びについて丁寧に解説していきたいと思います。
安心のための準備
乳がんでの入院は、一般的に1週間から10日ほどになります。検査やリハビリで気がつくと、あっという間に退院となります。下着のことを、お医者さんや看護師さんに聞く時間がなかったということも…。
たくさんは必要ありませんが少し、準備をしておくと安心です。
治療が始まる前に用意しておきたいアイテム
入院や手術の前には、次の用意をしておくと安心です。
- 前あきタイプのやわらかいブラジャーを1~2枚
- 市販(下着コーナー)で売られているような、薄いウレタンパット
- 綿やガーゼのハンカチ2~3枚
治療が始まると、体調によってすぐに買い物に行けないこともあります。できれば家族に頼むより、自分で選びたいですよね。
前あきタイプのやわらかいブラジャーは、できれば専用のものが安心です。
理由は、ポケットがあり、肌にやさしい生地やアンダーゴムが使われているからです。ネットショップでも購入できます。サイズも細かくないので、購入しやすいですよ。
入院中は、ガーゼを抑える胸帯を使う病院が多いです。入院すると、「売店でこの胸帯を買ってください」といわれます。消毒や診察のため、入院中は胸帯で過ごします。
しかしその後「外出のときどうすれば?」と不安になりますよね。
さらに詳しく、ブラジャーやパットについて説明していきます。
乳がん手術後とブラジャー・パットの役割は?
乳がんの手術後の下着の役割でもっとも大切なのは、左右のバランスを保つことです。胸は自分で思っている以上に重いです。そして、胸に傷があると恐怖心で猫背になり、無意識にかばってしまいます。また、パットがあることで思わぬ衝撃から術部を守ってくれます。
もちろん、ボディーラインやお洋服のシルエットも大切です。夏場は、とくに気になりますよね。心も身体もブラジャーとパットを身につけることで、ケアしていきましょう。
手術方法とパットの選び方
手術の方法も、手術後の経過もみなさん違います。全摘手術と温存手術でもちがいますし、温存手術のなかでもパットで補う場所は変わります。
全摘手術の場合のパット選び方
- 適度な重さと厚みのあるパット
- 手術部分をカバーできる、面積があるもの
- トライアングル(三角形)や左右別型(非対称形)
専用のブラジャーには、大きなポケットが付いています。重みと面積があるので、安定感があるので安心して使うことができます。
専用ブラジャーと合わせて使うことで、パットも長持ちしてくれますよ。
温存手術・部分切除 の場合
- 左右のバランスをみて、小さいパーツで補う
- シリコンタイプの薄いパットで全体をカバーする
温存手術の場合、決まった形というものがないため。左右で全体の違いがある方、4分の1切除されている方など、手術部分に合わせて選んでいきます。ウレタンの薄いパットを重ねることで、高さを合わせていくことができます。
パットの種類は大きく分けて3種類
パットは大きく分けて、3種類になります。
- 軽いウレタンタイプ
- ウレタンとシリコンの混合
- 100%シリコンタイプ
パットには、適度な重さが必要です。100%のシリコンタイプも手で持つと重く感じますが、実際の胸の半分くらいの重さになります。専用のブラジャーを利用すると、重さはほぼ感じません。また、軽すぎるパットは腕を動かすと、カップの中でずれ上がってしまいます。
身体のバランスのためにも、体調が回復してきたら適度な重さは必要と覚えておきましょう。
軽いウレタンタイプは、やわらかいスポンジのような感じになります。おうちでのリラックス用や、ボディラインが気にならないときにいいでしょう。
ウレタンとシリコンの混合タイプは、肌にあたる部分はやわらかく、内部にシリコンを入れているものがあります。内部のシリコンは、適度に重さを出す目的になります。
自分で、組み合わせてカバーに入れるものもありますよ。
100%シリコンタイプは、金額も高額(2万円〜4万円)になります。その分、薄いTシャツを着ても気にならないほど、自然なシルエットになります。また、胸の大きい人はウレタンパットでバストトップ(左右のバストの位置)を合わせることが難しい場合があります。その場合は、100%シリコンタイプがおすすめです。
パットをつけるときの注意点
パットはブラジャーのポケットに入れて使いますが、なるべく身体にフィットさせて使うようにしてください。
シリコンパットは、重さもあるので、怖い気持ちがあると思います。しかし、ゆるく合わせてしまうと肩に重さを感じてしまいます。アンダーバスト・肩ひも、そして身体全体でパットを支えるイメージですね。その方が、姿勢もよくなります。
また、軽いウレタンタイプのパットも同じくなるべくフィットさせましょう。フィットしていないと、軽いためゆるくて動いてしまいます。動くことで皮膚に摩擦がおきてしまいます。パットの厚さや感触が気になるようであれば、綿やガーゼのハンカチをクッション代わりに使うといいですよ。
お悩み別・選び方のポイント!
いつからブラやパッドを使用して大丈夫?どんなタイプを選べばいいの?
ブラジャーをつける時期は、術後の経過が良好であれば退院時や退院直後からつけることはできます。
また、手術の前に治療を行うケースもあります。その場合も自分の体調を確認するために、早めに慣れることもおすすめです。
術前治療〜術後のタイミングごとのおすすめブラ、パット
術前治療中に使用できるブラジャー
- 前あきタイプ 専用のやわらかいタイプのブラジャー
- 今まで使っていたブラジャー
治療が始まると、気持ちも体調も変化してきます。無理をしないようにしましょう。リラックスするときは、やわらかいタイプのブラジャーをして過ごしてください。
購入しておいた、やわらかいブラジャーを身体にならしていくつもりで、使い始めるのもおすすめです。
術後すぐ~退院後痛みが落ち着くまで
使用におすすめのブラジャーのタイプ
- 前あきタイプ スナップが硬すぎないように
- やわらかく、伸びがいいもの
- 肌に刺激がすくないもの
- アンダーゴムがきつくないもの
使用におすすめのパット
- 軽いウレタンタイプのパット
手術の方法や、体調の回復具合によりますが、多くの方が手術側の腕が動かしにくい状態になります。そのため、しばらくは前あきタイプがいいですね。
肌も敏感になっています。少しのゴムの擦れも気になりやすいです。専用のブラジャーは、肌に優しい素材を使っているので安心です。
また、利き手側の手術だと力が入らず、前あきのスナップがとめにくいかもしれません。焦らずにゆっくりいきましょう。
痛みや腫れが落ち着く~ゆっくりと通常の生活へ
術後落ち着いたころにおすすめのブラジャーのタイプ
- ノンワイヤーのブラジャー
- 肩ひも調節が肩の高い位置、または背中側
- 肩ひも広め
- サイド部分広め
術後落ち着いたころにおすすめのパット
- 軽いウレタンタイプのパット
- シリコンとウレタンの混合タイプ
- 100%シリコンタイプ
痛みや腫れがなくなったら、ブラジャーも少しずつ変えていくのが良いでしょう。おうちでリラックスするときは前あきのやわらかいブラジャーで、外出するときはノンワイヤーのブラジャータイプで…と使い分けてみてはいかがでしょうか?
また、肩ひもやサイド部分は広い方が安定感があります。また、肌へのくい込みがすくないので身体への負担を減らせます。肩ひも調節も、なるべく肩の高い位置もしくは、背中側にある方が安心です。直接傷にあたらなくても、金具の硬さが気になることがあります。
100%シリコンタイプのときは、肩ひもタイプのブラジャーを使うようにしましょう。前あきタイプのブラジャーに100%シリコンタイプを入れると、肩部分が布なので伸びて胸の位置が下がります。胸は左右の大きさの違い以上に、正面から見たときの高さの違いの方が目立ちます。
ワイヤ―入りブラジャーは使用しないほうがいい?
ワイヤー入りのブラジャーも使うことは可能です。ただ、手術部分とわきの下の痛みや腫れ、違和感が落ちついてからにしましょう。ワイヤーの圧迫は、角度によってくい込むような形になってしまいます。専用のブラジャーで使用しているワイヤーは、ソフトタイプや外付けにするなど、工夫がされています。
今までのブラジャーは使えないの?
今まで使っていた愛用のブラジャーを、引き続き使いたい方もいると思います。手術後しばらくは、前あきのやわらかいブラジャーを使った方がいいでしょう。
経過をみて、とくに痛みや違和感がなければ、今までのブラジャーを試してみてください。ただ先ほどもお話ししましたが、ワイヤーには注意が必要です。できれば、手術側を抜いた方がいいと思います。
またパットを入れる大きめのポケットが、カップについていません。薄いタイプのパットであれば、縫い付けて固定するのもいいですよ。
手術やその後の治療によって、ブラジャーの締め付け感が苦手になることがあります。今までのブラジャーが使えないと思うと、気持ちが沈んでしまう方もいるかもしれません。
ゆっくり、身体と心の心地よさを探していきましょう。
今までのブラジャーも、少しの工夫で活躍してくれるので、専用のブラジャーと組み合わせながら、洋服や気分によって選んでみてください。
適した取り扱いメーカー・ブランド
外来での通院や入院中に、病院から「こういうものがありますよ」とメーカーのカタログをもらうケースがあると思います。もし、見えるところに置いてなくても、看護師さんに聞くと案内してくれます。
ホームページではより詳しく商品情報が載っているので、そちらを利用するといいでしょう。
ワコール:リマンマ
全国に6か所リマンマルームと呼ばれる、専用のお店があります。予約制で、試着や相談のみでも大丈夫です。また、各地で無料相談会もおこなっています。専任のスタッフがいるので、ゆっくりと相談できる点がいいですね。
また、手術前からワコールを利用していた人なら、サイズや着け心地もわかっているので、利用しやすいですね。ブラジャーやパットはもちろん、ボディースーツや水着の取り扱いがあります。
ブラジャー・パット共に種類が豊富です。温存手術用の薄型シリコンパット(左右のボリュームを合わせる)の取り扱いがある点は嬉しいです。
グンゼ:MediCure(メディキュア)
下着メーカーらしく、こだわりを感じるのが「前あきシリーズ MediCure(メディキュア)」です。手術後の傷と痛みへの対応がすばらしいですね。パットを入れる部分は、縫い目がないので、ストレスを感じません。
また、ハサミでカットすることもできます。わきの下には、リンパ節切除により、傷がある場合があります。わきの下の傷は、違和感を感じる方が多い場所です。自分で調節できたら、不快感を減らすことができます。数ある前あきタイプの中でも、とくにおすすめしたい商品です。
シャルレ
乳がん経験者が以前と変わらない快適さを目指して、開発された下着とパットになります。
乳がん用としての種類は多くはありませんが、ノンワイヤーでも安定感と補整力はあります。
また、パットが特徴的です。何種類かのパットを組み合わせて、カバーに入れて使います。なんとなくパットが合わない…、と悩まれている方は一度試してみるといいですね。
ユコー
1973年に設立した「トータルブレストケア」のメーカーになります。お客様サービス室は、東京・横浜・名古屋・大阪の4か所ですが、毎月定期的に訪問している病院もあります。
100%シリコンタイプ(シリマ)は他社より金額は少し高めです。しかし、自然なラインと手術部分を保護する弾力と面積には定評があります。
また、大きなパットが入りやすいように、ブラジャーのポケットも開閉できます。
Fleep(フリープ)
肌が敏感な方でも安心して使える、優しい素材が人気です。手術や治療をすることで、肌が急に敏感になることもあります。タグの縫い付けが外側にあったり、縫い目が外にあるところが安心できるポイントです。
また、ポケット口も広めにできています。
前あきタイプで、サイズ展開も細かくカラーバリエーションも多いうえ、3,410円(税込)はコストパフォーマンスが良いと感じます。
avoir(アボワール)
乳がん経験者が開発・販売をしていて「乳がんを経験しても、おしゃれを諦めない」というコンセプトにとても勇気をもらえます。
その言葉通り、前あきタイプにも花柄やボーダー柄など本当におしゃれでかわいいです。ノンワイヤータイプもデザイン性が高いですね。
全体的に、温存手術の人向けのブラジャーやパットが充実しています。
自分の体調を一番に考え、ゆっくり、マイペースに
乳がん手術は、手術前から治療が始まるケースも増えています。体調の変化は、治療方法によって個人差があります。乳がんの治療は薬によって、体重の変化が起こるケースもあります。
手術後の傷や腫れ、体重が安定してから下着やパットも少しずつ、買い足していくといいですよ。
焦らずに自分の体調を一番に考えて、心地のよい下着やパットを選んでみてくださいね。
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